教師を志すみなさんにとって、結婚後も仕事を続けるための「育児休業(育休)」の制度は大変気になるところだと思います。教師の育休の状況はどうなっているのか、育休中の給与はどうなるのかなど、さまざまな疑問を抱いているのではないでしょうか。
そこで今回は、教師の育休についてくわしく解説します。ぜひ参考にしてください。
教師の育休は最大3年取得可能

育休は原則1歳未満のこどもを養育するための休業で、「育児・介護休業法」という法律に定められています。出産予定日前後8週の産前産後休業期間の後が育休の期間となります。
民間企業の育休は最長2年間ですが、公立学校の教師は、公務員として最長3年間の育休を取得することができます。
育休の取得率
文部科学省による「令和3年度 公⽴学校教職員の⼈事⾏政状況調査」によると、同年に新たに育児休業を取得可能となった者のうち、女性の取得率は97.4%、男性の取得率は9.3%でした。平成30年の調査結果と比較すると、女性で0.5%、男性では6.5%の増加が見られます。この結果から、女性のほとんどは育休を取得していること、また、男性の取得率は低いものの増加傾向にあることがわかります。
育児時短時間勤務取得率
「育児短時間勤務」とは、小学校入学前の子どもを養育するために、複数ある勤務形態から選択し,希望する日及び時間帯に勤務することができる制度です。「1日当たり3時間55分勤務する」「週3日勤務する」など、5つの勤務形態の中から選択して勤務することができますが、上でご紹介した調査によると、育児短時間勤務の取得率は、男性0.2%、女性3.7%にとどまっています。
部分休業取得率
「部分休業」とは、小学校入学前の子どもを養育するために、公務の運営に支障のない範囲で1日当たり2時間まで勤務しないことができる制度です。ただし、育児時短勤務をしている者は部分休業をすることはできません。
部分休業の取得率は、男性0.6%、女性5.1%と、育児短時間勤務の取得率よりは若干多いものの、あまり活用されているとは言えない状況です。
教師の育休中の給与は出るの?
では、育休中の給与や手当はどうなっているのかを見てみましょう。
育児休業手当が出る
公立学校の場合、育休中は給与の支給はありません。 ただし、共済組合等から育児休業手当金が支給されます。育休は最長3年取得できますが、 育児休業手当金を受け取れる期間は、原則として子どもが1歳に達する日までとされています。
受給の条件
育児休業手当金は、育児休業の承認を受けて勤務に服さなかった場合に支給されるもので、共済組合の組合員であることが受給条件です。ただし、育休前に、または育休中に退職した場合は受給の対象外となります。
初回2か月分の手当の申請は、育休を開始した日から4ヶ月を経過する月の月末が期限で、その後も2カ月ごとに申請する必要があります。
必要書類
育児休業手当金を受給するためには、育休に入ってから、次の書類を所属校に提出する必要があります。
・育児休業手当金請求書
・育児休業承認請求書の写し
・育児休業承認通知書の写し
・育児休業開始月の給与支給明細書の写し
育児休業手当金請求期間に変更があった場合は、「育児休業手当金請求書」に、育児休業承認請求書の写しなど変更の内容がわかる書類を添付して、共済組合に提出します。
育児休業手当はどれくらい支給されるのか

1ヶ月あたりの育児休業手当金の計算方法は、育休開始後180日までと181日以降で計算式が異なります。
▼育休開始から180日まで
【休業開始時賃金日額×支給日数(通常30日)】×【67%】
▼育児休業開始から181日目以降
【休業開始時賃金日額×支給日数(通常30日)】×【50%】
「休業開始時賃金日額」とは、育休開始前の6カ月間の賃金(税金や健康保険料を引かれる前の金額)を、180で割った金額です。
たとえば、休業前の月収が30万円だった場合は、次のようになります。
▼育休開始後180日までの手当金
(30万円×6か月)÷180 × 支給日数30日 × 0.67 = 201,000円
▼育休開始後181日以降の手当金
(30万円×6か月)÷180 × 支給日数30日 × 0.5 = 150.000円
育児休業手当の上限
育児休業手当には、支給上限が設けられています。上限額は毎年改定されており、令和6年は、育休開始から180日間(支給率67%)の上限額は約31万円です。支給額が31万円になる月収は約46万円ですので、月収が46万円を超える人は、育休手当の支給額が31万円以上増えることはありません。
育児休業手当の支給開始タイミング
育児休業手当の支給開始は、出産日から4~5カ月ほど後になります。
育休期間自体が産後休暇(8週間)の後にスタートすることに加え、初回の手当金は2カ月分がまとめて支給されるためです。さらに、育休手当金申請後の審査や振り込みにも数週間かかります。
育休が始まってすぐに手当を受け取れるわけではないので、支給されるまでの期間の生活費については、あらかじめよく考えておきましょう。
育児休業手当の支給期間
育児休業自体は最長3年取得できますが、育児休業手当の支給期間は、原則として1年間です。ただし、2010年から始まった「パパ・ママ育休プラス」という制度を活用すると、子どもが1歳2カ月になるまでの間に、最大1年まで育児休業手当金の給付を受けることができます。
特別な事情がある場合は延長可能
子どもが1歳になった後に特別な事情があると認められる場合には、育児休業手当の支給期間が最長2年に延長されます。
「特別な事情」とは、
・保育園に入れる見込みがない場合
・子どもの世話をするはずだった配偶者が死亡・負傷・疾病等の理由で養育できない場合
・世話をする予定だった配偶者の死亡、けがや病気、離婚などの事情で養育が難しい場合
…などを指します。
特別な事情により育児休業手当の支給延長を求める場合には、子どもが1歳になった時と1歳6カ月になった時に申請を出す必要があるので注意しましょう。
まとめ
教師の育休とその手当について見てきました。
公立学校の教師の育休は、最長3年取ることができるなど、比較的恵まれています。女性はもちろん、男性の取得率も少しずつではありますが上昇傾向です。教師の働き方改革の流れもあり、育休の制度は今後も充実していくことが期待されます。ぜひ積極的に活用して、ライフワークバランスの実現を目指したいものです。
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