コラム

教師はやめとけと言われる理由は?現役教師が語るリアルな仕事環境

教師はやめとけと言われる理由は?現役教師が語るリアルな仕事環境 教師

「教師になるのはやめとけ」――そんな言葉を聞いたことがあるでしょうか。

「教師は大変」「なるのはやめておいたほうがいい」という声を聞いて、「教師を目指したいけど、大丈夫かな?」と迷っている方や、すでに教師になったものの「このままでいいのかな?」と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、この記事では、教師が「やめとけ」と言われる理由や、現役教師である筆者のリアルな仕事環境などをお伝えします。ぜひ参考にしてください。

実は学校教員の離職率は1%未満?

まず、教師の離職率について見てみましょう。

「教師の仕事は大変で、離職率も高い」というイメージがあるかもしれませんが、データを見るとそうとも言えません。

文部科学省による「令和4年度学校教員統計中間報告」をもとに計算すると、小学校・中学校・高等学校とも、教師の離職率は1%未満です。

民間企業で「離職率5%を切ればホワイト企業」と言われていることを考え合わせると、教師の離職率自体は特別高いとは言えないことがわかります。

教師から民間企業への就職が難しい

ただし、教師の離職率が低い一因として、「教師から民間企業への就職が難しい」という事情もあります。教師を辞めて民間企業に転職したいと思っても、ビジネスマンとしてのスキルが不足しているのではないかと危惧したり、担当している児童生徒への影響を考えたりして、転職したくても踏み切れない、といったケースもあります。

教師の仕事が「やめとけ」と言われる理由

では、教師の仕事が「やめとけ」と言われる理由は何なのでしょうか。

ここでは、4点挙げます。

業務時間(学校にいる時間)が長い

次の表は、文部科学省が平成28年と令和4年に行った教員勤務実態調査の結果を示したものです。

多少の改善傾向は見られるものの、令和4年のデータでも、小学校・中学校・高等学校いずれも「教諭」の平日の勤務時間は10時間を超えており、1日あたり2時間以上の残業をしている計算になります。

一般労働者の月あたりの平均残業時間が13~14時間程度と言われていることと比較すると、教師の業務時間はかなり長いことがわかります。

平日
小学校中学校高等学校
平成28年度令和4年度増減平成28年度令和4年度増減令和4年度
校長10:3710:23-0:1410:3710:10-0:279:37
副校長・教頭12:1211:45-0:2712:0611:42-0:2410:56
教諭11:1510:45-0:3011:3211:01-0:3110:06
講師10:5410:18-0:3611:1610:27-0:499:53
養護教諭10:079:53-0:1410:189:53-0:259:19

  (出典:https://www.mext.go.jp/content/20230428-mxt_zaimu01-000029160_2.pdf)

残業代という概念がない

公立学校の教師には、「残業代」という概念がありません。教師の業務のうち、「職員会議」「修学旅行・校外実習」「生徒の実習に関する業務」「学校の行事に関する業務」「生徒指導で緊急措置を必要とする場合」には、校長が残業を命じることができるとされていますが、その場合にも時間に応じた残業代が出るわけではありません。これは、昭和46年に制定された「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」という法律によるものです。

残業代が出ないかわりに、給料月額の4パーセントが「教職調整額」として支給されていますが、この額が教員の実際の残業実態と乖離しているとして、近年問題となっています。

授業範囲が広い(小学校の場合)

小学校の場合は、基本的に担任教師がそのクラスのほとんどの授業を受け持ちます。何教科もの教材研究や教材準備が必要ですが、勤務時間中には授業、宿題の点検、児童の対応などに追われるため、翌日の授業準備は勤務時間外に行うしかない、というケースも多く、「大変だ」と言われる一因になっていると考えられます。

保護者との関係性

理不尽な要求をしたり、クレームをつけたりしてくる保護者、いわゆる「モンスターペアレント」がいると、教師はその対応に時間をとられて疲弊します。こうした保護者は、勤務時間に関わらず、夜間や休日にも連絡をしてくる場合が多く、対応を誤るとそれが長期化して、教師は大変な思いをすることになります。

現役教師が語る、リアルな仕事環境

それではここで、現役高校教師である筆者のリアルな仕事環境をご紹介します。あくまで一個人の例ですが、参考までにご覧ください。

労働時間

勤務時間は8時20分からですが、1時間前には出勤します。前日に終わらなかった仕事を片付けたり、その日の授業内容の確認をしたりします。1日の授業を終えて生徒が下校した後、翌日の授業準備やその他の校務分掌の仕事をします。退勤時間は16時50分ですが、その時間どおりに退勤する同僚はごく一部です。授業以外の仕事も非常に多いため、それを終えてから翌日の授業準備を徹底しようとすると夜8時を回ることも日常的にあり、1日12時間前後は在校しています。

土日の稼働状況

部活動の担当がないため、土日は基本的に休みです。しかし、平日に時間的余裕がないので、残務が多い時には自発的に休日出勤をしたり、仕事を自宅に持ち帰ってこなしたりせざるを得ないこともしばしばあります。

勤務校は部活動が非常に盛んなため、部活動顧問を担当している同僚は、土日もほぼ休みなく指導にあたっています。その多くはやりがいを感じて生き生きと取り組んでいますが、中には家庭生活を犠牲にしているケースもあり、配偶者から学校にクレームが入ったこともあります。

保護者との関係性

筆者の場合、保護者との関係性は比較的良好で、クレームなどを受けることはほぼありません。ただ、高校勤務ということで、進路指導で保護者の期待に応えたい、生徒を必ず志望先に合格させたいというプレッシャーは常にあります。

また、中には、熱心なあまり夜間や休日にも相談の連絡をしてくる保護者もおり、それを無下にもできないため、ストレスを感じることもあります。

家での授業準備

平日は帰宅が夜8時を回るため、メンタルヘルス上、それ以降の時間は仕事を忘れるように努めています。一方週末には、平日に仕事に追われている状態を少しでも緩和するために、教材を持ち帰って、翌週分の授業準備やテスト作成、校務分掌上の事務仕事などを行うこともしばしばあります。

それでも教師という仕事を目指すなら

ここまで見てきて、「教師はやっぱり大変そうだ…」と感じた方も多いかもしれません。ただ、大変な中にも喜びややりがいはもちろんあります。

これから教師を目指すみなさんには、そうした大変さや喜びを実際に体感して、教師が自分に合っているかどうかを考えてみることをおすすめします。

教える体験をするには、塾講師のアルバイトが一番です。教師の仕事を疑似体験できるとともに、学校教師とはまた違う塾講師の仕事を知ることで、進路選択の幅も広がることでしょう。

まとめ

教師が「やめとけ」と言われる理由や、現役教師のリアルな仕事環境などをお伝えしました。

確かに、教師の仕事には大変なことがたくさんあります。しかし、それはおそらくどんな仕事にも言えることでしょう。職業選択にあたっては、現場のリアルな声をできるだけ多く聞くとともに、アルバイトや教育実習などを通して仕事の一端に実際に触れてみることで、「自分がどう感じるか」を大切にしてください。

この記事を読んだ皆さんが悔いのない選択ができるよう、心からお祈りしています。

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