コラム

公立学校の教師に対して残業代が支払われない理由とは?教師の残業実態も解説

公立学校の教師離職率は約1%!離職率が低い理由と職場環境を解説 教師

教師になることを検討中のみなさん、「公立学校の教師には、会社員と違って残業代が出ない」ということについてはご存じのことと思います。しかし、残業代が出ない理由や、教師の残業の実態については、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、教師に残業代が出ない理由や、教師の残業の実態について解説します。教師として就職を決める前に、ぜひ参考にしてください。

どうして公立学校の教師に対して残業代が払われないのか?

公立学校の教師に残業代が支払われないのは、昭和46年に制定された「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(※以下、「給特法」と表記)という法律によるものです。

制定当時は、学校の夏休みなどの長期休業期間に自宅や学校外で自主的に研修を行うなど、教師の勤務時間内に自由な時間が多くあったことから、ひとりひとりの勤務時間の管理が難しいとされ、休日勤務手当や時間外勤務手当などを支給しない代わりに、給料月額の4パーセントを「教職調整額」として支給する、と定められました。

残業代の代わりとなっている「教職調整額」

「教職調整額」は、給特法が制定された当時の教師の月平均超過勤務時間が「約8時間」だったことを参考にして計算され、「給与月額の4%」と定められました。

しかしその後、教師の超過勤務時間は大きく増えました。平成28年に文部科学省が行った「教員勤務実態調査」によると、週あたりの勤務時間は小学校で57時間29分、中学校で63時間20分と、労働基準法によって定められている「週40時間」を20時間前後上回っており、給特法の算定基準となった、月平均超過勤務時間約8時間とは大きく乖離している実態が問題となっています。

「10%」へ引き上げるという動きも

近年、教師のこうした残業の実態が問題視され、給特法で定められた「給与月額の4%」を「10%」に引き上げようとする動きもあります。

しかし、10%に引き上げたとしても結局「定額働かせ放題」であることに変わりはなく、過酷な長時間労働の抑止を望む現場教師の要望とはかけ離れた対応であるとして批判が起きています。

教師の残業は4つのパターンに限定されているハズだが…

給特法は本来、教師に月8時間を超えた時間外勤務をさせないようにする意図を含んだものですが、次の「超勤4項目」に該当する場合で、かつ、臨時または緊急のやむを得ない必要があるときに限って、時間外勤務をさせることができるとされています。

「超勤4項目」

① 校外実習その他生徒の実習に関する業務

 実業系の高校で必要な単位を取得するための校外実習を行う場合などには、外部の関係施設等との打ち合わせや突発的なトラブルの対応などが勤務時間外になることがあり得ます。

② 修学旅行その他学校の行事に関する業務

 修学旅行や宿泊研修などの行事では、最初の集合時間から帰校・解散までの間、通常の勤務時間を超えた時間外勤務が発生します。

③ 職員会議に関する業務

 通常の職員会議は勤務時間内に設定されますが、やむを得ない必要があると校長が判断した場合は時間外であっても行われる場合があります。

④ 非常災害の場合、児童または生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務

 地震や津波などの自然災害時や、児童生徒の問題行動が発生した場合などには、時間外であってもすぐに対応しなければならないケースが考えられます。

それらの内容は形骸化されている

教師に時間外勤務を命じることができるのは、この「超過4項目」に該当する場合だけのはずですが、現在の教師の残業実態を見ると、勤務時間外に教材研究やテストの作成・採点を行わざるを得ない例や、部活動指導のために休日出勤する例があるように、これに該当しない時間外労働が非常に多く、給特法が形骸化していることは明らかです。

一方、私立学校は残業代が支払われる

給特法は公立学校に勤務する教育職員を対象としたものなので、私立学校に勤務する場合は該当しません。私立では、民間企業と同じように労働基準法が適応され、残業代が支払われるのが一般的です。ただし、一部の私立学校では、公立に準ずるような仕組みを独自に定めて「定額働かせ放題」状態となっているところもあるため、注意が必要です。

教師の残業実態

文部科学省は、平成28年と令和4年に公立学校の教師を対象にした勤務実態調査を行いました。この調査によると、各校種ごとの1日の在校時間は次のようになっています。

わずかな改善は見られるものの、平日の勤務が依然として10時間を超えているなど、残業代の出ない長時間労働の実態はあまり変わっていないと言ってよいでしょう。

平日
小学校中学校高等学校
平成28年度令和4年度増減平成28年度令和4年度増減令和4年度
校長10:3710:23-0:1410:3710:10-0:279:37
副校長・教頭12:1211:45-0:2712:0611:42-0:2410:56
教諭11:1510:45-0:3011:3211:01-0:3110:06
講師10:5410:18-0:3611:1610:27-0:499:53
養護教諭10:079:53-0:1410:189:53-0:259:19
土日
小学校中学校高等学校
平成28年度令和4年度増減平成28年度令和4年度増減令和4年度
校長1:290:49-0:401:591:07-0:521:37
副校長・教頭1:490:59-0:502:061:16-0:501:18
教諭1:070:36-0:313:222:18-1:042:14
講師0:570:20-0:373:101:53-1:172:10
養護教諭0:460:22-0:241:100:29-0:410:34

引用元:https://www.mext.go.jp/content/20230428-mxt_zaimu01-000029160_2.pdf

残業代が出ないことが気になるなら

「やっぱり残業代が出ないのは気になるな」と感じた方もいるかもしれません。そんな方は「民間の教育機関」も選択肢に入れることをおすすめします。

学校でなく、塾の講師や家庭教師としても、子どもの教育に関わることはできます。受験に特化して指導したい場合は予備校講師の道がありますし、得意教科を生かして英会話講師になる、といった道も考えられます。

教師という道も目指しながらも、教育業界への就職に視野を広げることで「自分がどの様に教育に携わりたいのか?」ということを考えるきっかけにもなります。

また、塾の講師や家庭教師であれば、学生のうちからアルバイトとして経験することでも、自分の将来の選択肢を考える材料にすることもできます。

まとめ

今回は、教師に残業代が出ない理由や、教師の残業の実態について解説しました。

公立学校の教師の給与水準は一般企業の平均と比べると比較的高いとされますが、志望するのであれば、今回ご紹介した残業の実態も把握しておいたほうがよいでしょう。

教育に携わる仕事には、公立学校教師のほかにもさまざまな選択肢があります。一度視野を広げて、自分にとってのそれぞれの職種のメリットデメリットを検討してみるのもおすすめです。この記事を読んだみなさんが、納得いく選択をされることをお祈りしています。

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